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人間の胆力

2020.06.05

世界中で「地球温暖化!」などと、人間による地球破壊が叫ばれております。 おそらくその一面もあるのでしょう.
とはいえ、新型コロナウィルスの影響がようやく落ち着く希望が見えて来たこの頃ですが、ほんの小粒のウィルスによって、これ程までも影響を受けてしまうあたり地球スケールでの人類は、まだまだ弱さを携えた存在なのだと感じます.

出歩くことが出来なかったこの頃なので、古い写真での話となりますが・・・ 昨年の秋の事、埼玉の入間川の河岸に一面に咲く曼珠沙華を観に行きました. 河原の遊歩道にそった木々の中に咲き誇っており、1本では華奢な存在ですが、群となると辺り一面を繊細ながらも凛として紅くうめつくし、それは見事なものでした。

ところが数週後・・・
たまたま曼珠沙華が咲いていた河岸の対岸側を通りかかり、目のあたりにしたのはつい先日歩いた遊歩道もろとも、ごっそりとえぐり流された光景でした。昨年10月12日 超大型台風19号の爪痕です。 コンクリートテトラも動かされ、途中の堰に引っかかる流木は驚くべき当時の水位を物語ります。 曼珠沙華が咲き乱れていた対岸が、跡形もなくただの砂利河原に 河岸 木々の手前にあった遊歩道が根こそぎ削られ流されています
断面が生々しい 流れを抑えるテトラポッドも、あっさりずれ動いております
下流側を見ると、堰に引っかかる流木が・・・堰がよく耐えてました
我々、設計者はデザインをしていく影で、地震や台風などの天災や、重力にあらがい対抗するべく日々汗をかいておりますが、 この様な光景を見ますとその力の絶対差に愕然とさせられます。

さて、話を少し変えて、次の写真は都内で現在工事中の有料老人ホームの現場です。今年末に完成予定の地下1階、地上5階建で、写真は今年1月の地下ピット部の工事中です。

ここで見えております、がっしりと水平に巡る赤い鉄骨は、建物の構造体ではありません。地上から6mもの深さを掘る為、周囲の土壁が内側に崩れて来ないようにおさえております。写真中央 鉄骨の下で作業されています

工事中に地震や重力による崩れが起きないように、構造計算によって必要な鉄骨サイズでつっぱり、安全を保持するわけですが・・・先程の河岸をえぐり、コンクリートのテトラを、1日でいとも容易に動かす自然のパワーと比べますと 、極太の鉄骨でがっつりと土をおさえながら、その内側で粛々と工事を進めていくあたりに人間の必死さを感じてしまいます。

そんな地中からの現場も、今月はいよいよ3階の床のコンクリート打設をするまでに立ち上がりました。 もちろん地下の土壁の崩れ等の問題もなく、地上の部分が地面下で何事も無かったかのように立ち上がってきております。 今年の8月には5階までのコンクリートが完成いたします。

地球のスケールでの話となると、人間は結局非力ではありますが、コツコツと積み上げていく『人間の胆力』は、実際のところ超高層や東京スカイツリーといった特大なスケールでも台風や地震にも耐える建築を生み出してきております。

建築に携わるものとしては、自然の力を正しく畏れて、実直に向き合っていくのが大切なのでしょう。 コロナが及ぼす試練も、コツコツと頑張っていきたいと思います。

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